豊里友行句集『バーコードの森』（初版）『Forest of a barcode』

悪霊散らす流星の石敢當

九条の首狙う太刀鯉のぼり

国にぶら下がる蝙蝠蟻の巣まで囚
　
休日の歩幅は虹のワルツです

缶コーラの底へ地球のへその戦火

もどれないクローンおむすびの蛇穴

休日の布団悟空の雲になる

追って来る秒針蛇になる縄の眩暈

煩悩をなだめる手のひら星のゆりかご

じんじんじん針突(ハジチ)の皺がとぐろ巻く
　
みな握り潰す夕焼けとんぼの日の丸

島丸ごと戦果のような夕日の烙印
　
じり貧の地球にしがみ付くダルマ浮き

島二分する傍受だサクランボ耳

光年の星座織るコオロギの綾羽

神の怒り盗んで植える地雷

ＩＴの傘裏触れる蜘蛛の巣の傍受
　
侵略の稲妻痕のミミズ穴

踊れ(モーレ)踊れ(モーレ)死者燈す月の抜け道

象の足裏覗く空店舗の森

軍鶏(タウチー)の首捩じる方言札　　　
　　
煩悩のろくろ首です捩り花

家族の煩悩笑い転がす火之神(ヒヌカン)

街じゅう花いちもんめの百円ショップ

屋号呑み込むデパート蛙になる

僕ら葉騒の波星の根っ子は地球抱く

裏切りの黒点の釘四月馬鹿

慰安婦絞る蛙の声紋の井戸

逃れのがれ洞窟(ガマ)に根を張る百合の悲鳴
　
捨て石の戦火を泳ぐ亀甲墓

島包む百合の悲鳴はプラスチック
　
泡盛の街はどっぷり土竜になる

岬泣く宇宙軸抱く死者の弦

悲哀の目を量るミミズの火柱

さがり花叫びは遠く獄下に落ち

月桃ゆれ涙の岩の月動く

ヒンプンの回転ドア悪霊の迷宮入り

島の祖霊呼ぶ雨は喇叭のしぶき

空蟬の洞窟(ガマ)月の谺燈す　

アジアの牙か双葉の目の辺野古(へのこ)

死児あやす平和通りの島バナナ
　
蟻の列が会話持ち去る酷暑

コンビニの惑星の孤独回遊魚

八月の産毛火柱のまま歩く

薔薇活ける原爆図より回路引く

被爆の嗚咽銀河へ運ぶ天道虫

天軸弾く爆心地のあめんぼ
　
闇背負う帰郷です被爆の羽蟻

雨月の盗賊でしたかヤモリの目

じゅり馬の片草履(かたさば)ですか月天心
　
棲みついた鮫が泣くのかレントゲン

夢野までネクタイで飼う李徴の虎

熱帯魚の君へ泳ぎ切るＦＡＸ

退屈な歩幅コンビニ星人でいる

ジュラシーの子鬼隠れたチューリップ
　
埋め立ての月の扉へトントンミー

源氏もロミオも天道虫の惑星へ

虹の多産鬼門を描く観覧車

遺書を編む月の抜け穴芭蕉呼ぶ

星は悪寒隕石を吐くテロリズム
　
テロ陽炎画像の蛇が島を呑む
　
神の咳です空の亀裂の落葉
　
放物線の画竜の目落す株価
　
疑惑の芽化ける木(キ)の(ジ)精(ムナー)「だいじょぶさぁ」

棺か蛹か蝶の鍵穴のテロ

つっつくと角立つ島豆腐の半生